認知症と認知機能

認知症とは、認知機能に障害があり、その障害がだんだんと悪化していく病気です。

日本神経学会の「認知症疾患治療ガイドライン2017」では、認知症は、「正常であるはずの認知・精神機能が、精神障害などの意識障害によらないで日常生活や社会生活に支障をきたすほどに持続的に障害された状態」とまとめられています。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

認知機能について

 上記にある認知・精神機能、つまり認知する精神の機能は、通常、認知機能と言われています。脳の記憶機能と認知機能は密接に関係して日常生活や仕事が行われます。認知機能は意識はしていませんが常に働いています。記憶機能は言葉で表すことができるものと意識されない短期記憶やプライミング記憶があります。お釣りの計算や電話する時には短期記憶が働いています。これがうまく働かなくなると、買い物の代金に見合うお金を財布から出すことや数桁ずつ覚えて電話をすることができなくなります。プライミング記憶は潜在意識の1種で、例えば「あきたけん」という言葉を見せた後に「あ○○けん」の○○に語を入れる課題を行うと、「あきたけん」という返答が「あいちけん」よりも多くなる現象を言います。プライミング記憶によって、はじめての場所から来た道をたどって元の場所に帰ることができます。
 認知機能を一言でいうと自分の周りの状況に対する感覚で、この機能によって、今の時間や季節や時代、自分がいる場所やその地理的な位置、また、周囲の人たちと自分の関係が無意識のうちに分かります。これが正常に機能しないと正確な判断ができず、日常生活や社会活動ができなくなり、人としての尊厳が保てなくなります。認知症では記憶機能と認知機能の両方に障害が生じます。
 同じ脳の障害でも、統合失調症(分裂病)などの精神病は記憶力や認知機能は正常ですがこれらを統合した判断に異常がある病気で、認知症とは異なります。

健忘と認知症

よく、健忘は認知症の始まりと言われます。しかし、健忘は、記憶力が低下していても認知機能は正常で、認知症とは異なります。健忘は高齢者だけではなく、例えば、薬剤や飲酒によっても生じることがあり、原因を取り除けば健忘ではなくなります。
 認知機能には記憶力も関係するため、記憶力が低下すると認知機能にも影響します。この状態がMCI(軽度認知障害)と言われています。MCIは、認知症に移行するリスクが高いことが分かっています。MCIは改善することが可能で、この段階で認知症を予防することが重要と言われています。

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